《接合》 (Restoration)の前提条件について

ガープス魔法大全』の呪文《接合》 (Restoration)の前提条件について
ガープス魔法大全』p.241の付録では

《大治癒》、ないし《麻痺回復》と《〜回復》から2種

となっており、『ガープス魔法大全』p.120の説明では

《大治癒》。もしくは《麻痺回復》と《〜回復》2種

となっている。

ここで《麻痺回復》とは《麻痺治療》(Relieve Paralysis)の訳語不統一です。
ガープス魔法大全』の原書『GURPS Magic』(Magic 4e (Gurps))では
原文:

Prerequisites: Either Major Healing or any two of Relieve Paralysis and the various “Restore” spells.


この原文によると「《麻痺回復》と《〜回復》2種」は、あたかも、名前が「回復」で終わる呪文を2つ習得しなければならないと誤解しそうですが、原文の通り、《大治癒》(Major Healing)を1つ習得するか、《麻痺治療》と1つの "Restore" 呪文と合わせて2つを習得していれば前提条件を満たすことができます。

さてここで《〜回復》ですが、原書『GURPS Magic』(Magic 4e (Gurps))では"Restore" Spellを習得していれば良いとなっています。日本語版では"Restore"を「回復」と訳してそのまま前提条件と見做してしまっています。
まず呪文名に "Restore" を含む呪文を原書『GURPS Magic』(Magic 4e (Gurps))から探してみました。

  • Restore 《見せかけ》 (物体操作系呪文) - 壊れた無生物を一時的に新品に見せかける呪文 (但し、効果が持続している間、一時的に修復はされます)
  • Restore Hearing 《聴覚回復》 (治癒系呪文)
  • Restore Mana 《魔力回復》 (呪文操作系呪文) - マナがない場所のマナを周囲のマナの平均レベル程度まで回復する呪文
  • Restore Memory 《記憶復元》 (治癒系呪文)
  • Restore Sight 《視覚回復》 (治癒系呪文)
  • Restore Speech 《言語回復》 (治癒系呪文)

上記のうち、《見せかけ》《魔力回復》は肉体から切断された腕や脚をくっつける呪文《接合》と関係があるのかないのかわかりませんが、この2つ以外の呪文全ては、《接合》と同じ治癒系呪文なので、"Restore" Spellsにあたる考えて良いと思われます。

しかしそれなら、《記憶復元》も《言語回復》も切断された腕をくっつける呪文と直接関係なさそうな呪文に見えて、対象外と考えてしまうこともできてしまいます。
なので、"Restore"と名がつく呪文は、どれも一時的にでも永久にでもRestore (修復)する呪文には変わりないので、《接合》の前提条件にできると考えてもよいかもしれません。

また原語にはRestoreが含まれていないが日本語訳名称に「回復」が含まれている呪文を挙げてみます。日本語版の間違っていると思われる、《接合》の前提条件を、馬鹿正直に受け入れるとこうなるでしょう。

  • 《エネルギー回復》 Recover Energy (治癒系呪文) - 習得しているだけで睡眠中のFP (疲労点) の回復速度が上昇
  • 《回復の眠り》 Healing Slumber (治癒系呪文) - 目標を眠らせて睡眠中のHPとFPの回復速度を上昇させる
  • 《狂気回復》 Relieve Madness (治癒系呪文) - 「妄想」(Delusion)、「恐怖症」(Phobia)、「脅迫行為」(Compulsion)と呪文によってもたらされた狂気 (Madness) を1つ一時的に除去

上記3つは、治癒系呪文でありいかにも治療に適した呪文です。しかし、切断されてしまった腕をくっつけるだけの呪文に必要なものではないともいえます。なら先ほど挙げた《記憶復元》も《言語回復》も切断された腕をくっつける呪文と直接関係ないのにRestore呪文扱いしているならこれらもRestore呪文扱いにすべきだ考えることもできてしまいます。しかしこれらもRestore呪文とすると、他のあらゆる治療、修理に関する呪文もRestore Spellとみなすことができてしまいます。

ということなので、やはり「回復」の名がつく呪文ではなく、Restoreの名がつく呪文を《接合》の前提条件とすべきところでしょう。治癒系呪文でかつ原語の名前に "Restore" を含む呪文でもある《言語回復》《記憶復元》が《接合》の前提条件にしても違和感がないなら、治癒系呪文ではないが、 原語の名前に"Restore" を含む呪文である《見せかけ》も《魔力回復》も前提条件しても違和感がないでしょう。

"Restore" Spell が日本語版では「《〜回復》」と翻訳されることがこのような問題を引き起こすことがわかりました。日本語と英語が一対一対応ではないという問題によって、そのままでは原書と日本語版とで《接合》の前提条件がまったく違うものになってしまうという問題が生じてしまいます。ハウスルールと見做して呪文名が「回復」で終わるものを前提条件にしてもよいでしょう。ただしゲームバランスの保証はありませんし、原書メインでプレイしている人やキャラクターを作成している人とは、データに修正を加えない限り一緒にプレイしづらい状況になるかわからないでしょう。原書を基準に作られたキャラクターシートやテンプレートを使って新たにキャラクターを作るときも、問題に衝突する可能性もあるでしょう。そこで "Restore" Spellとは何かを調べてみたのでした。

他にもこのような問題を抱えているであろう前提条件を持つ呪文があります。
たとえば、前提条件に以下のものを含む呪文です。

  • 《〜変化》("Shape" Spell) - 《動く物体》(Animate Object)の前提条件
  • 4精霊すべての《〜変化》(all four Elemental Shape Spell)- 《地形変化》(Alter Terrain)の前提条件
  • 《〜〜探知》("Seek" Spell) - 《動物探知》(Beast Seeker)《道案内》(Pathfinder)《方向探知》(Seeker)の前提条件
  • 《変身》(Shapeshifting Spell) - 《変化 (種族)》(Transform Body)の前提条件
  • 《〜変身》("Shift" spell) - 《本性感知》(Know True Shape)の前提条件
  • 《〜変身》(types of shapeshifting)《大変身》(Great Shapeshift)の前提条件
  • 《〜〜を〜〜》(transmutation spell, 名称に前置詞toがある呪文) - 《燃料作成》(Create Fuel)の前提条件
  • 《〜作成》("Create" spell)- 《物体変形》(Transform Object)の前提条件
  • 電光呪文 ("Lightning" spell) - 《電光の鎧》(Lightning Armor)の前提条件 (前回のエントリで解説)
  • 《〜歩行》("Walk Through" spell) - 《扉作成》(Create Door)の前提条件

確認したものに限り、日本語と原語が一対一対応により、GURPS Magicを見るかぎりは今のところ問題がないであろうと考えられる前提条件を持つ呪文です。
ただし、GURPS Magic以外のサプリメントに、前提条件に該当すると思われる新呪文が登場した場合は、呪文の固有名詞の日本語訳については注意が必要になるかもしれません。

  • 《〜鋭敏化》(Keen (Sense)) - 《注意力強化》(Alertness)の前提条件
  • 《〜鈍化》 (Dull (Sense)) - 《愚鈍化》(Dullness)の前提条件
  • 《〜制御》 ((Animal) Controll Spell) - 《合成獣制御》(Hybrid Controll)の前提条件。前提条件では原語が(Animal) Control、日本語版の《動物制御》の呪文に相当。「〜」に動物名等が入る。

ガープス魔法大全

ガープス魔法大全

Magic 4e (Gurps)

Magic 4e (Gurps)